大山求 & Helga Ritsch への7つの質問

 

Q 作品を通じて表現したいことは何ですか。

大山: 鉄、金属は空気中で酸化し、その趣は微かに虚い昨日と異なります。それは、素材に在る、もののあはれ、無常感です。作品はその虚いを生活空間に取り入れて見え易いよう形にしたものです。

ヘルガ:私の作品を見たり、触れたり、使ったりすることで、一瞬でも他のことを忘れ、希望と喜びで人生を豊かにすることができるような、人生の可能性を反映した美しさと崇高さを作品に持たせたいと思っています。

 

Q あなたにとってものを作るということはどういう意味を持ちますか。

大山: 私が私で在る為の行為と手段であり、他者と私を繋げ、如いては社会性を私に齎すものでもあります。

ヘルガ:まず第一に、ものを作ることは私にとって仕事です。自分が満足し、求めるものを達成するためには時に困難を伴いますが、自分ができることを少しずつ, 真剣かつリラックスして作業することを続けていくことで成し遂げようとしています。私にとって作ることは、自分の人生を創造し、この地球上での時間を過ごすための方法でもあります。

 

Q あなたにとってアートとはどういうものですか。

大山:アートとは作り手の範疇には無く、受け手の感性に委ねるものかと思っています。

ヘルガ:私にとってアートとは、自分の考えや感情を形成し、秩序立て、共有する試みであり、必要なものです。なぜなら、それは明らかに(理由はどうあれ)私にとって重要なことだからです。理解しよう、されようとする努力、集中力とフォーカスすることの鍛錬です。これは、私が多くのことに耐えるために役立ちます。

 

Q あなたが鉄を素材として選んだ理由は何ですか。

大山:実はそこに然程の意思、必然性は無く、只只、偶然に等しいです。

ヘルガ:陶土は柔らかいので、多くの道具を使わなくても、製作過程で何度でも修正できます。また、私は騒音が好きではないので製作時の音も小さいのもいいですね。窯で焼いた後に素材の状態が変わるところも好きです。焼成中の最後の瞬間は、結果を少しだけ「偶然」に任せることができます。そして窯の扉を開けた時、できた作品を見て自分自身驚くことがあります。この予測できないところが、私にとってこの素材の魅力です。

 

Q あなたにとって白と黒という色はどういう意味を持っていますか。

大山: 陰陽、エロスとタナトス、それは表裏一体なのだと思います。

ヘルガ:私にとって黒は、終わり、暗闇、夜を表し、白は、始まり、明るさ、昼を表します。私は両方の状態や時間が好きなので、両方の中で生活し、いいバランスを見つけるようにしています。

 

Q あなたにとって西洋と東洋は、どのような違いがあると思いますか

大山:西洋と東洋の宗教、哲学がベースに在るかと思いますが、余白を埋める西洋美術に対し、余白を描く東洋美術、アプローチの相違は感じます。しかし美に相違は無く、同じ山を異なるルートで登っているのだと思います。

ヘルガ:この質問への答えを長い間考えたのですが、これまで東洋で過ごした時間が短かすぎて、この質問に意味のある答えを出すことができないと思うに至りました。 そこで、この質問をスイスと日本に限定してもよろしいでしょうか。慎重にお答えしますと、どちらの国も抑制がきいていて、きちんとしている印象。全体として現れたことを重視し、必ずしも個々を重視していないように思います。 スイスは小さな国ですが、日本は大きいので、自然とすべてがより複雑になっている気がします。そのため、スイスではどちらかというと平易なものが評価され、日本ではより際立ったもの、優れているものが求められます。 私の主観ですが、日本では「美」という概念がより強く意識され、理解されているように感じます。一方、スイスではこの現象は表面的で役に立たないものと見なされることも多く、人々を怖がらせることさえあります。私の父の出身地であるイタリアでは違うようです。 要するに、東洋と西洋には様々な国があるので、この質問に答えるのは難しいですね。

 

Q 【ヘルガさんから大山さんへの質問】

あなたにとって花とは何ですか。

大山: 花は今

 

Q 【大山さんからヘルガさんへの質問】

スイスの自然、環境が作品に与える影響はありますか。

ヘルガ:基本的に、環境は私の仕事や仕事への姿勢に影響を与えます。自然、そしてそれに伴う静けさや空間は、私が自分の仕事に集中するのにとても役立っています。ですから、スイスの南側にある山の中のスタジオで多くの時間を過ごしています。スイスの風景が私の作品に影響を与えているかどうかは、まったく別の国で仕事をしたときに、私の作品がどのように変化するかを見てみないとわからないと思います。そうでなければ、スイスの風景が私の作品に影響を与えているかどうか、はっきりとはわからないでしょう。もしかしたら影響していないかもしれません。どこの国であっても、静けさや自然豊かな環境の方がより大きな要素かもしれないと感じます。

 


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